Episode 10 拒絶

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(フフッ、松美ちゃん……貴方の大好きなお兄さんが居れば、あの世でも寂しくないでしょ?) フタを開け、小瓶を持つ手を ゆっくりと上げていく。 内河は興奮のあまり周りが見えておらず、清菜が何をしようとしているのかにも気づいていない。 (死ね) 内河の頭より高い位置に上げた右手を傾け、小瓶の中身を彼にかけようとする清菜。 だが小瓶の中身が零れる寸前――背後から何者かに右手首を掴まれ、動きを止められた。 「誰っ!?」 驚きのあまり声を上げて振り向く清菜。 しかし彼女が何者かの姿を見るよりも先に、掴まれていた右手首を捻られてしまう。 「きゃああ゛あ゛ぁああっ!!」 骨が折れる鈍い音と共に腕の構造を無視して右手を捻られ、曲げられて激痛に清菜は悲鳴をあげる。 「な、何だっ!?」 さすがの内河も清菜の尋常ならざる叫び声に驚き、咄嗟に彼女の肩から手を離して後ろに下がる。 すると そのタイミングを見計らったかのように、清菜の捻られている右手から小瓶が落ち、そのまま床に叩きつけられて粉砕した。 「う、ぐぎぃぃっ!」 小瓶が割れると同時に掴まれていた右手首が離され、自由の身になった清菜は左手で右肩を押さえて踞る。 「な、何だっていうのよっ!!」 曲がってはならない方向に曲げられてしまった右腕を一瞥した後 勢いよく振り返ると、黒いコートとドクロの仮面をつけた人物の姿が視界に映り、清菜の全身から血の気が引いていった。 「ア、アンタが……教祖様の言ってた……死神……!?」 アナスタシオス教団の教祖から聴かされていた“人を殺してまわっている死神”の話を思い出し、気が強い清菜も恐怖感を露に震えだす。 血の気が失せた青白い顔をしながら こちらを真っ直ぐに見つめてくる清菜を見下ろしつつ、死神――黒斗は彼女の元へ一歩 歩み寄る。
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