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(あの死神だって、本部には来れない筈)
逃げきれたことを確信し、ゲートの中に入ろうと歩みを進める清菜。
だが一歩 踏み出した瞬間、首筋に冷たい刃が当てられ、動きと共に一瞬 呼吸が止まった。
「その手に持っているスマートフォンを捨てろ」
すぐ後ろから聴こえてきた声に反応し、心臓が激しく脈打つ。
逃げきれたと安堵したそばから再び やって来た死の恐怖に、泣き叫びたい衝動に駆られる清菜。
だが ここで理性を無くしては本当に全てが終わると自分に言い聞かせ、必死に唇を噛んで冷静さを保つ。
(大丈夫、大丈夫よ……まだ逃げる隙はある!)
ドクドクと鳴り響く心臓を喧しく思いながらも、スマホを持つ左手に力を込める。
緊張しているせいか胃の辺りがハサミで刺されているようにジクジクと痛み、その痛みが焦燥感を与えてくる。
(大丈夫、きっと上手く逃げられるっ!)
握りしめたスマホを勢いよく地面に投げつける。
軽い衝撃音が響くと同時に首筋に当てられていた刃物が離れ、その隙をついて清菜は前方のゲートに向かって地面を蹴って飛んだ。
だがゲートが目前に迫った その瞬間、無情にもゲートは闇に溶け込むように消滅してしまい、そのまま彼女は地面へと無様に倒れこむ。
「あ、ぅっ!」
地面に勢いよく倒れたことによる痛みに呻きつつ、上半身を起こして背後を見やる。
すると、仮面を外して素顔を露にしている黒斗が手にしている大鎌で清菜のスマホを突き刺し破壊している光景が視界に映った。
「あ、あ、あぁ……ああああああぁあぁあ!!!!」
死神の正体が黒斗だったという驚きより、スマホを破壊されたショックが大きかった清菜は瞳孔を大きく見開き絶叫する。
スマホを破壊されてしまった為、ゲートを開いて本部へと逃げることは出来ない。
それは即ち、死を意味していた。
「いやあああああぁあああぁぁ!! 死にたくないぃぃぃぃ!!」
目前に迫った死に怯え、気が触れてしまったように髪を振り乱しながら号泣する清菜。
喉が裂けそうなほどの大声で叫び続ける彼女を尻目に、黒斗はスマホからデスサイズを引き抜き、片手でソレをくるりと回した後に清菜の顔に切っ先を突きつけた。
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