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「……人を変死させたのは何度目だ?」
「……し、し、知らないっ! 私は何もしてない、何も悪くないっ!!」
涙を流して赤くなった目で黒斗を睨み付けながら叫ぶ清菜。
そんな彼女の態度に黒斗は呆れたように首を ゆるゆると振ると、蔑(さげす)みの眼差しを彼女に向けて口を開いた。
「……お前が人を変死させて殺したのは三度目だ。一度目は実の兄である篠塚 龍馬。二度目は友人だった内河 松美。そして三度目は副担任の徳井 忍。
勝手な理由で人を殺しておいて自分は何も悪くないなど、どの口が言うんだ?」
苛立ちを露に目を細める黒斗の顔は死神に相応しい、身も心も凍りつきそうな恐ろしい雰囲気を醸し出している。
だが半分 理性を無くしてパニック状態となっている清菜は、黒斗の迫力に怯むことなく言葉を続けた。
「私は、私は何も悪くない! 悪いのはアイツら、周りの皆よ! 皆が私の人格を全否定して、拒絶して、自分の理想を押しつけてきた!
だから私は これ以上 傷つきたくなかったから、皆を殺すしかなかった!!
私は何もしていないのに、皆が責めてきたから悪いのよっ!! 悪いのは私じゃなくて みん……」
「ベラベラと よく口が まわる女だ……もういい、その不快な声を それ以上 聞かせるな」
清菜の言葉尻を、忌々しそうに顔を歪めた黒斗が憤怒の感情を滲ませた声で遮ると、彼はデスサイズを彼女の顔の目の前で真横に振り抜いた。
「ひっ!」
短い悲鳴をあげながら反射的に目を閉じる清菜。
だが彼女が危惧していたような痛みは身体の どこにも はしらず、妙に思いながらも恐る恐る瞼を開ける。
(……痛く、ない……?)
身体や手足を見るも、先程アパートで折られた右腕以外にケガをしている箇所は無い。
(……ふん、ただの脅かしね!)
安堵した清菜の口元が綻ぶ。
だが その時――
プッ
何かが切れるような小さな音が耳に届き、それと同時に口の端から耳の付け根に かけて頬に違和感を覚える。
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