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「……お前も自分の思いや考えばかりを押しつけて、家族の真意を知ろうとも分かり合おうともしなかった。不満を口にするばかりで、自分から状況を変えようともしなかった。
自分を取り巻く環境を変えたいのなら、自分が行動を起こすしかない。自分を理解してほしいのなら、理解してもらえるよう努力をするしかない。自分から動かない限り、何も変わりはしないんだ」
「あげぇべ……ぐげ……」
口が裂け、喉や舌が血で濡れているせいで意味を持つ言葉を紡げない清菜。
もはや身体を動かす気力も残っていないのか、彼女はグッタリと俯せのまま倒れ伏したまま動かない。
そんな清菜に黒斗は躊躇(ちゅうちょ)なくデスサイズを向ける。
「……お前にだって一番の理解者は居た……だが……お前は そいつを拒絶して殺した。お前は自分で自分を孤独にしたんだ」
そう呟く黒斗の瞳は赤く輝き、おもむろにデスサイズを振りかぶり、そして――
「……お前は やりすぎた。犯した罪に対する罰を受けてもらう」
清菜の首へ勢いよく降り下ろした。
「っ」
声なき悲鳴をあげる清菜の首に突き刺さるデスサイズは、あっという間に彼女の首の皮膚を、肉を、骨を断ち、清菜の首と胴体を切り離した。
もはや身体の痛みも感じなくなり、徐々に意識が遠くなっていく清菜。
薄れていく意識の中、雲の上をフワフワと漂っているような奇妙な浮遊感と共に彼女の脳裏に今までの人生が走馬灯のように映し出された。
幼かった頃、幼稚園児の頃、小学生の頃、中学生の頃――それらの思い出が浮かんでは消えていく。
そして その思い出の中、いつも隣に居たのは、いつも一緒に居てくれたのは――松美であった。
“清菜さん、私は清菜さんの友達であります”
意識を失う直前 清菜の脳裏に浮かんだのは、そう言って笑う松美の姿だった――。
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