Episode 10 拒絶

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一方その頃、橘家 (……これでよし、と) 今日の聞き込みで得た情報を こと細かくノートに書き記す作業を終えた鈴は、椅子に座ったまま身体を大きく伸ばした。 「んんー……今日は あまり収穫が あらへんかったけど、また明日も あるしな……頑張って清菜さんの行方が分かる手がかりを見つけへんとな」 清菜が変死事件の犯人であることも、松美が彼女に殺されて亡くなったことも まだ知らない鈴は、心から清菜の心配を続けていた。 いくら酷いことを沢山 言われていたとしても、鈴にとっては彼女ももう友人の1人。 心配をするのは当たり前のことだった。 (さて……明日に備えて、そろそろ風呂に入って休もうかな) 入浴をするべく椅子から立ち上がり、自室の出口に向かう鈴。 扉についているドアノブを握った その瞬間―― ガシャアアアアアアン 「ヒャッ!?」 まるで食器棚が倒れたような物々しい音が耳に届き、肩が跳ね上がる。 「な、なんや? オカンに何かあったんか?」 一体 何が起きたのかと彼女は慌てて部屋を出て、音の出所であり、母が居るであろう1階のキッチンに向かう。 「オカン、どないしたんや!?」 そう叫びながらキッチンへと飛び込む鈴。 すると そこには、目を疑うような光景が広がっていた。 「……え?」 驚愕のあまり凍りついたように動きが止まり、目を大きく開いたまま その場に立ち尽くす鈴。 そんな彼女の視線の先には、身体中にガラスや食器の破片が突き刺さり、血まみれになっている状態で横たわっている母と、そんな母を笑いながら見下ろす大神の姿が あった。 「……やあ、橘」 鈴の存在に気づいた大神が、彼女に顔を向けながらニッコリと微笑む。 「大神……くん……? オカン……?」 母と大神の姿を交互に見やり、身体をガタガタと大きく震わせる鈴。 本当は今すぐに倒れている母の元に駆け寄りたいのに、まるで金縛りにでも あってしまったかのように身体は石のように固まっていて動かすことが出来ない。 「クク……そんなに怯えなくてもいいのに」 鈴が動かないのではなく動けないことに気づいているのか、大神はニヤニヤと醜悪な笑みを浮かべながら ゆっくりと彼女の元に歩み寄っていき、そして――
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