Episode 11 嘘

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何も言わずに睨みあう2人。 その時、不意に何かがズルズルと這いずるような音が聴こえ、黒斗とウンデカは互いから視線を外して音が した方へ顔を向ける。 すると、ウンデカが放った黒い矢が左胸に突き刺さったままの清菜の肉体が左手と両足だけでブルブルと震えながら立ち上がっている姿が見えた。 「アイツ、まだ……!?」 あんなにもボロボロの状態でも未だに動ける清菜に驚愕する黒斗。 彼が驚いている間に清菜は左胸に刺さっている矢を引き抜き、それを後方へ適当に放り投げた。 もはや体内の血が殆ど無くなってしまったのか、首の切断面と矢を引き抜いた左胸から溢れだす血の勢いは非常に弱くなっている。 だが それでも彼女の動きは鈍ることなく、フラフラとした千鳥足に似合わぬ俊敏な動きで黒斗とウンデカに急接近してきた。 「……私のことも分からないとは、何という愚鈍な人間だ。まあ……頭が無くなって何も見えなくなっているのだから無理もない……か」 興味が無さそうに気だるく呟き、ウンデカは清菜の接近に動じることなく右手を上げる。 すると彼の右手の中に虚空からデスサイズがスゥッと現れ、デスサイズを手にしたウンデカは素早い動きで それを振り下ろし、切っ先を清菜の首の切断面に突き刺した。 「っ!」 声を出せない清菜の代わりの如く、短い悲鳴をあげる黒斗。 その間にもウンデカはデスサイズを さらに深く刺しこみ、鋭い刃は清菜の首の切断面から体内を貫通し、股間を突き破って飛び出した。 「……お前にはエリシュオンで住まう資格は無かったようだ。非常に残念だよ、同志よ」 言葉とは裏腹にウンデカは どうでも良さそうに、串刺しとなっている清菜の肉体に語りかけると、彼女が刺さったままのデスサイズを大きく振り回し、そして―― 「お別れだ」 デスサイズの刃に刺さっている清菜の肉体を、勢いよくコンクリートの壁に叩きつけた。 尋常ならざる力で硬い壁に叩きつけられた彼女の肉体は衝撃に耐えきれずに破裂し、原型を留めていない赤黒い肉片となって壁の周辺に飛び散っていく。 そんな中 大腸を はじめとする辛うじて原型が残っている臓器の数々は、血の痕がベッタリと ついている壁を伝い、血だまりの中へと泥水が跳ねるような音を響かせながら地面に落下していた。
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