深淵に繋がる穴

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僕の心の中には ぽっかりと大きな穴があいている とても深くて底がなくて暗い穴 何年経とうと どんなものも 誰であろうと この穴を埋めることはできない この痛みは僕のもの あなたを失って生まれた穴 悲しくて 痛くて 穴が開いていることを 必死で隠そうとするんだ 笑顔を張り付けて 思い出さないようにするんだ なにかの拍子に 吹き出す悲しみを 静かな涙が洗うけど やっぱりその穴はぽっかりとあいたままで 時が解決すると言うけれど 広がった穴が完全に塞がることはなかった 失った悲しみを忘れることはなかった 時が解決したのは その悲しみを薄めて 新しい思い出で塗り替えたこと 楽しいことも嬉しいこともたくさんあった 新しい出会いも別れもたくさんあった でもあなたを忘れられない 会いたい 会いたいな 触れてみたい 声を聞きたいな 一緒に笑いたい 喧嘩でもいいんだ あなたの爪の形 自分の爪を見て  こんなだったかなと触れてみる 記憶を探る もう二度と会えない人 大切で僕の一部で全部だった人 脳がシールドをかけた これ以上心が痛まないように 耐えきれなくて爆発しないように 記憶が薄くなっていく もうあなたの声 はっきり思い出せない あなたの笑顔も 淡く思い出せない 最後の会話 もっと優しい言葉をかけてあげればよかった あの頃こどもだった僕 思いやりがたりなかった 今さら悔やんでも取り戻せないのに ごめん許して 懺悔の言葉は闇に沈む 今でもあなたを想っている 偽りなく だから穴はこのままで この痛みはずっと持っていくよ 僕の命の光が消えるまで あなたは今でも僕の一部で全部だから
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