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俺も、家族はいない。 親戚と付き合いも無く、それがこの研究施設に誘われた理由だろう。 籍を置いていた大学には、俺が海外の研究所に勤務する事になったと伝えられたらしい。 だから、友達もいない俺が地下に閉じ込められても、誰も探しに来ないのだ。 きっと、加賀も似たり寄ったりの境遇なんだと思う。 食堂や娯楽室では気軽に話し掛けて来る彼も、俺の部屋を訪れる事は無い。 互いに仲間意識はあっても、友達を作ろうとする人間はいないのだ。 ここは、孤独な人間の集まりだった。 2度目のトマとの面会は、俺1人だけだった。 俺は通行証を何度もセンサーに翳して扉を潜り、やっとあの部屋の前に来た。 トマは直ぐに気が付いて、ガラスの前に立つ。 俺は、彼とガラス越しに会話を始める。 「研究員の小山です。 今日から毎朝、きみの1日の予定を伝えるのが僕の仕事に…。」 すると唐突に、トマが言った。 「ちづるさんでしょ?」 「え?」 「女の子みたいな名前だね。」 俺もちょっと反発したくなって答えた。 「トマって名前も、変わってるよね。」
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