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トマは3日置きに体調を崩した。 熱を出し、全身の痛みを訴える。 体の中でウィルスが影響を与えているようだが、なぜか彼は回復する。 俺達の研究は、その謎の解明だった。 ウィルスの正体を突き止め、トマが絶命しない理由が分かれば、世紀の大発見だ。 あの事故で命を落とした人間がいるにも関わらず、事実を隠蔽して研究を最優先するのは、医療の飛躍が期待出来るからだ。 その結果、人類とウィルスの闘いに終止符が打てれば、例の事故も尊い犠牲だったと認知されることだろう。 役人達はそれを視野に、この施設を動かし続ける。 トマは具合が悪くても、俺が訪ねるとベッドから出て来た。 「起きなくていいんだよ、トマ。 会話はそこからでも出来るんだから。」 しかし、トマは青白い顔で首を横に振る。 「ちづるの顔が見たいんだ。」 「俺の顔なんか見ても面白くもなんとも…。」 その時、トマの体がぐらりと揺れた。 「トマ!」 俺は叫び、無駄だと知りながらガラスに手を伸ばす。 トマも向こうからガラスに掌を付き、バランスを取って笑顔を作ると、ぽつりと言った。 「…きみは、自由の匂いがする。」 トマが何を言いたいのか、俺には理解出来なかった。 ただ、彼の瞳を間近で見た途端、心臓が飛び上がりそうになった。 黒い瞳は病人とは思えない輝きを放ち、息が掛かるほどの距離で俺を真っ直ぐ見つめる。 しかし、俺達の間には強化ガラスの厚い壁があり、見る事は出来ても感じる事は不可能だった。
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