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大事件が起きた。 それは事故ではなく、仕組まれた物だった。 その時、俺はトマとガラス越しにチェスをしていた。 俺は将棋が得意だったが、トマは駒に触った経験さえ無く、互いにルールを知っているチェスで遊ぶ事になったのだ。 チェス盤はトマの部屋にあり、俺はガラスの前に胡坐を掻いて、次の一手を口で伝える。 トマも床に寝転び、俺の指示に従って駒を動かす。 が、たまにズルをするものだから、俺は目を光らせていなければならなかった。 「あ、トマ! そこじゃないって!」 俺が反則を訴えるのと同時に、廊下のドアのロックが外れて加賀が現れた。 いつも飄々としているのに、顔が引き攣っている。 ただ事ではないと感じ、俺が立ち上がると、彼は言った。 「緊急会議だ。きみも来い。」 何かがおかしい、そう思ったが、俺は言われるままトマとの遊びを切り上げて、加賀の後に付いて行く。 ドアを開けて外に出ると、向こうから集団がやって来るのが見えた。 頭から足の先まで防護服に身を包んだ職員と、数名の子供達。 歳は5から7才くらいの男女で、皆軽装だった。
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