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トマの部屋が、例の子供達のいる研究区域に移される事になった。
彼自ら希望したらしい。
それを知り、俺も即座に移動を所長に願い出た。
うんと言わせたのは、
「俺はトマの唯一の友達だ。俺と離れたら、彼はまた自殺する。」
と脅し文句を浴びせたからだ。
効果は覿面で、俺は1週間後にトマのいる施設に移った。
久し振りにトマに会った。
ガラスの向こうの部屋は間仕切りが増え、ベッドも5台置かれている。
彼は、子供達と同居していた。
驚きを顕に、トマが俺に近付いて来て言う。
「…どうして、きみまでこっちに来たの?」
「離れたくないから。」
自分の口から、こんな言葉がすらすら出るとは思わなかった。
でも、嘘ではない。
トマが、ガラスに掌を押し付ける。
俺も、そこに掌を合わせた。
子供達の奇形は、ある日突然、進行が止まった。
そして、体内に宿ったウィルスは、やっぱり彼らを殺さなかった。
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