59人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
俺はなぜか、感染後も生きている。
トマの部屋に侵入した俺は、彼と抱き合って眠った。
落ちた眼球は壊死したが、トマ本人は痛みを訴えず、繋いでいたはずの神経や血管もすっかり修復されていた。
まるで、駄目になった部位を切り捨てて接合したような状態だ。
これもウィルスの仕業なのか?
それとも、トマが特異体質なのか?
ただ、魔法の様に全てが戻るはずも無く、トマの右目は穴が開いたままだった。
俺は子供達を寝かし付け、朝になるまでトマと一緒にベッドにいた。
そして、彼の体に触れた。
もうずっとそうしたかった俺は、欲求が爆発しそうだったが、衰弱している彼を傷付けないように出来るだけ優しく全身を愛撫した。
10本の指と、唇と、舌を使って。
俺は裸で、トマの服も剥ぎ取ったから、彼も全裸だ。
初めて、彼の体温を知った。
そして、肌や筋肉の感触も。
トマは最初、嫌がった。
「見られたくない。」と言い、それから「もっと早くに会っていたら…。」と呟いた。
だから俺は、彼の崩れた右顔も、腫れた腕にもキスし、
「きみが好きだ。」
と告白した。
俺には、トマが美の象徴であるかのように見えた。
この感情が一般常識と掛け離れているとしても、俺は心から彼を美しいと思い、共に抱き合いたいと望んだ。
そして、そこに愛があると胸を張って言えた。
最初のコメントを投稿しよう!