5.

3/6

59人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
トマと何度もキスをした。 嬉しかった。 俺は彼が気持ち良いと思う事全てを実行し、子供達が時々目を覚まして行為を中断しなければならなくても、彼らを寝かし付けると、また再び快楽を共有した。 俺とトマはガラスの壁をぶち壊し、漸く一緒になる事が出来た。 翌朝、俺は当然ながらトマの部屋の中に居る所を職員に見つかり、すぐに隔離された。 俺の体の中に彼と同じウィルスが見つかり、その日から俺自身も研究用の検体となった。 俺はウィルスの宿主となった事に驚きも悲しみも感じなかった。 だが、計画を投げ出すつもりは無い。 俺はわざと所長の哀れみを誘うような言動を繰り返し、トマの部屋に隣接して俺の隔離部屋を設けて貰い、そこで引き続き研究も出来るよう、パソコンや実験用具まで用意させた。 旨く行ったのは、俺が 「自分の死後まで医療の役に立てるよう、誠心誠意研究に努めたい。」 と所長に訴えたからだろう。 自分がこれほど流暢に嘘が吐けるのを知り、部屋に戻ってから思い出し笑いしていると、トマがやって来た。 俺と彼の部屋はドア1枚で繋がっていて、感染者同士いつでも行き来出来る。 「何が面白いの?」 トマが、俺の肩に手を置いて尋ねる。 俺は彼の手を握って答えた。 「きみとこうして毎日触れ合えるのが楽しいんだよ。 きみはどう?」 トマも、にっこり笑って言った。 「うん。僕も楽しいよ。」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加