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トマと何度もキスをした。
嬉しかった。
俺は彼が気持ち良いと思う事全てを実行し、子供達が時々目を覚まして行為を中断しなければならなくても、彼らを寝かし付けると、また再び快楽を共有した。
俺とトマはガラスの壁をぶち壊し、漸く一緒になる事が出来た。
翌朝、俺は当然ながらトマの部屋の中に居る所を職員に見つかり、すぐに隔離された。
俺の体の中に彼と同じウィルスが見つかり、その日から俺自身も研究用の検体となった。
俺はウィルスの宿主となった事に驚きも悲しみも感じなかった。
だが、計画を投げ出すつもりは無い。
俺はわざと所長の哀れみを誘うような言動を繰り返し、トマの部屋に隣接して俺の隔離部屋を設けて貰い、そこで引き続き研究も出来るよう、パソコンや実験用具まで用意させた。
旨く行ったのは、俺が
「自分の死後まで医療の役に立てるよう、誠心誠意研究に努めたい。」
と所長に訴えたからだろう。
自分がこれほど流暢に嘘が吐けるのを知り、部屋に戻ってから思い出し笑いしていると、トマがやって来た。
俺と彼の部屋はドア1枚で繋がっていて、感染者同士いつでも行き来出来る。
「何が面白いの?」
トマが、俺の肩に手を置いて尋ねる。
俺は彼の手を握って答えた。
「きみとこうして毎日触れ合えるのが楽しいんだよ。
きみはどう?」
トマも、にっこり笑って言った。
「うん。僕も楽しいよ。」
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