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その研究所は地下に設けられた国営施設だったが、行われている研究は極秘機密で、存在自体知られていない。 閑かな漁村の集落の真下で、今日も科学者や医師達が最先端技術を屈指し、未知のウィルス解明に勤しんでいる。 俺は大学の院生で、遺伝子の変異について研究を続けていた。 しかし、こんな秘密の施設など噂を耳にした事も無く、仕事の誘いを受けた時には冗談だと思った。 ただ、笑って断るなど出来ない異質な状況ではあった。 深夜、俺のアパートに2人組の男が現れ、研究所で働かないかと唐突に持ち掛けられたのだ。 2人は政府の役人だと自己紹介したが、俺は信用しなかった。 すると、拉致同然で見知らぬ邸宅に連れて行かれた。 そこは、ある政府高官の家で、本人が登場して俺に細かな説明を始めた。 顔はテレビで見た事があったが、何しろ俺は世の中全般に疎い。 政治にもアイドルにも興味が無く、毎日、大学の研究室に籠もって仕事をしているせいで、その男を前にしても説得力を見出だせなかった。
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