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この長閑な漁村の風景を初めて見た時、俺には地下施設が実在するなど信じられなかった。 しかし、黒服の男達が俺を含む数人の研究者達を工場へと案内し、秘密のエレベーターに乗せられた瞬間、実感が沸いた。 俺達を乗せた箱は地の底へと降下を続け、もう外へは出れないのだと、諦めに近い思いが押し寄せる。 全員が押し黙っていた。 そして、軽い衝撃と共に箱が止まり、体に重力を感じた途端、扉が開いた。 目の前には、蛍光灯に照らされた廊下と、ずらりと並ぶドアが待ち構えていた。 あの時と違い、今は夜中で海面は真っ黒だ。 俺を港まで運んでくれたのは地元の漁師で、夜行性の野鳥の調査が目的だと話すと、疑いもせず船を出してくれた。 そして明朝の迎えも約束してくれた。 彼が待ち惚けを喰うか否かは俺の力量次第だ。 或いは、運か。 俺は集落から外れた山の麓にある工場に侵入した。 建物は見掛けだけで、中は空っぽだ。 唯一、実際に稼働しているのはエレベーターのみで、それも壁のパネルを起動させなければランプさえ点かない。
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