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俺は起動に必要な暗証コードを知らない。
例え知っていたとしても、脱走者が出た時点で変更されているはずだ。
だから、陰に隠れて好機を待つ。
地下施設と地上を結ぶ出入口は、このエレベーターのみだ。
万が一、施設内で事故が起きた場合、中にいる人間の逃げ道は他に確保されていなかった。
それ所か、工場ごと埋没するよう、起爆剤まで仕掛けられている。
秘密を丸ごと地中深く葬るつもりなのだ。
ここにいる研究者達は、その事実を知らない。
俺は潜入している間何度も、大声で叫びたい衝動を抑え付けねばならなかった。
「あんた達も、使い捨ての材料なんだぞ!」
夢にも出て来て、俺を悩ませた。
『TOMA』のサンプルが入った試験管が整然と並び、それをせっせと回収している白衣の人間達。
上から土砂が降り注いでも、彼らは黙々と仕事を続けるのだ。
もう、限界だった。
俺はここから逃げた。
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