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目が覚めると、暖かい陽光が降り注いでいた。
随分前だが、俺は南洋の島々を訪れた事がある。
それと同じ太陽の匂いを感じた。
起き上がり、周囲を見回す。
俺は板張りの簡素な小屋にいた。
寝ていたベッドは、床に敷かれた藁の上に布が被せられた粗末な物だった。
でも俺は、充足感に満たされていた。
こんなにぐっすり眠ったのは何年振りだろう?
開けたままの板戸の向こうから、子供達の無邪気な歓声が聞こえる。
俺は吸い寄せられるように戸口に向かい、顔を出した。
俺は息を飲んだ。
そこに、天国があった。
顔見知りの子供達。
でも、その姿は以前と少し違っていた。
背中に瘤があった男の子は、今や誇らしげに背筋を伸ばし、宙に浮いていた。
いや、空を飛んでいたのだ。
肩胛骨の辺りから美しい翼が開き、羽ばたく度にここまで風を感じる。
眼下には池があり、人魚が泳いでいた。
ああ、あの子だ。
全身を覆っていた鱗は七色に輝き、不自由だった足は尾びれとなって力強く水飛沫を上げている。
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