59人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
池の縁に腰掛けているのは、腕が伸びた男の子。
彼はその両腕をしなやかに動かし、不思議な色の空気の輪を作っては飛ばす。
人魚が勢い良くジャンプし、彼の作った輪を潜る。
それを見て、頭蓋骨の変形した子供が大喜びして手を叩く。
リオンだ。
でも、今の彼の頭頂部は隆起が治まっていた。
その代わり、鹿のように美しく枝分かれした角が彼の頭を飾っていた。
不意に、空気が変わった。
甘く優しい香りが漂い、何者かが現れる予感があった。
俺は小屋の外に立ち、背後の森からこちらにやって来る1人の青年を見つめる。
「…トマ。」
「久し振りですね、加賀さん。」
トマがにっこり笑う。
彼は全裸で、輝きに満ちていた。
全身は赤く、片目も失っているが、俺が今まで会ったどの人間より美しかった。
俺はもう、溢れる感情を抑え切れず、声が上擦るのも構わずに尋ねた。
「小山は?彼はどこだ?」
「大丈夫。彼はあそこにいます。」
最初のコメントを投稿しよう!