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小山は、巨大な木の洞の中にいた。
赤ん坊のように身を丸め、やはり全裸で、すやすや眠っている。
浮かんでいるのか、時々、中でゆっくり身体を動かす。
でも、目を覚まさない。
いつの間にか隣にトマが立っていて、俺にそっと囁いた。
「起こさないで下さい。
ちづるはまだ、覚醒していないんです。」
恐怖と驚き、そして未知の出会いが俺の心を揺さ振って、涙が溢れ出て来る。
俺はそれを腕で拭いながら彼に尋ねた。
「覚醒?彼も変わるのか?」
「ええ、変化します。」
トマが微笑んで答える。
「彼が望んだ通りに。」
「え?」
俺は急に夢から醒めた気持ちになり、トマを見る。
トマはまるで俺を試すように、言葉を選びながら言った。
「あのウィルスは人の細胞を殺す。
でも、共存を望めば応えてくれる。
研究所の人間は彼らを利用する事しか考えていなかったけど、彼らは宿主と共に生きる道も残してくれていたんです。
それには、彼らにとっても良い環境が必要でしたが。
それが、肉体変異です。
僕らの中には今もウィルスがいる。
でももう、同意が無ければ感染しません。」
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