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「…どう言う意味だ?」
混乱する俺に、トマがにっこり笑って告げた。
「協定を結んだんです。
宿主は共存を受け入れる人間だけ。
変異も、出来るだけお互いの理想に近い形で。
だから加賀さん、あなたは感染しませんから安心して下さい。」
俺は立っていられなくて、地面に座り込んだ。
その足元に、赤と青の羽に彩られた見た事の無い野鳥がひらりと舞い降り、好奇心に満ちた目で俺の様子を窺う。
俺は急に自分の境遇が気になり、辺りを見回して尋ねた。
「ここはどこなんだ?」
「ある無人島です。
詳細は言えません。
ここで僕らはひっそりと生きる事を決めたんです。」
そして、トマは呟く。
「僕らは宇宙の塵。」
俺は言葉を失う。
目の前で人類の常識を覆す大事件が起きているのに、『宇宙の塵』だと言うのか?
きみ達は自分の身に起きている事を誤解している、そう喉まで出掛かった言葉を、俺は飲み込んだ。
トマが、俺に笑って言ったからだ。
「加賀さん、いつかあなたがここに戻って来たくなったら、僕らは歓迎しますよ。」
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