3.

5/5

59人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「…どう言う意味だ?」 混乱する俺に、トマがにっこり笑って告げた。 「協定を結んだんです。 宿主は共存を受け入れる人間だけ。 変異も、出来るだけお互いの理想に近い形で。 だから加賀さん、あなたは感染しませんから安心して下さい。」 俺は立っていられなくて、地面に座り込んだ。 その足元に、赤と青の羽に彩られた見た事の無い野鳥がひらりと舞い降り、好奇心に満ちた目で俺の様子を窺う。 俺は急に自分の境遇が気になり、辺りを見回して尋ねた。 「ここはどこなんだ?」 「ある無人島です。 詳細は言えません。 ここで僕らはひっそりと生きる事を決めたんです。」 そして、トマは呟く。 「僕らは宇宙の塵。」 俺は言葉を失う。 目の前で人類の常識を覆す大事件が起きているのに、『宇宙の塵』だと言うのか? きみ達は自分の身に起きている事を誤解している、そう喉まで出掛かった言葉を、俺は飲み込んだ。 トマが、俺に笑って言ったからだ。 「加賀さん、いつかあなたがここに戻って来たくなったら、僕らは歓迎しますよ。」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加