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トマ、と言う名前から外国人を連想したが、彼は日本人だった。
背は標準だが痩せていて手足が長く、髪は茶色掛かったくせっ毛だ。
歳は俺より3つくらい下だろうか?
顔も小さくて整った容姿と言えただろう。
ケロイドさえ無ければ。
彼の右目の下から顎にかけて寄れた皮膚が隆起し、ピンク色に変色していた。
火傷なのか、病気が原因かは分からないが、これだけの医療設備と腕の良い医師が揃っているにも関わらず、整形処置を施されていないのが不思議だった。
不意に俺は気付く。
ここは厳重危険区域。
この廊下は24時間浄化処理されているが、ぶ厚いガラスの向こうは…。
所長が俺達を安心させるように言う。
「施設の管理は完璧で、部屋の外まで汚染物質は流出しないから大丈夫だよ。
トマと直に接触しない限り、きみ達は安全だ。」
しかし恐怖が勝ったのか、研究員の1人が一歩後ろに下がる。
トマはそれに気付き、ゆっくりと部屋の奥に戻ってしまった。
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