59人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
食堂でチキンカレーを食べていると、隣に加賀(かが)が腰を下ろした。
彼はベジタリアンで、肉抜きのカレーだ。
「小山さん、トマに会いましたか?」
「ええ…。」
俺は辺りを見回す。
誰に忠告された訳では無いが、この話題は口にしてはいけない気がした。
加賀は俺の様子に気付き、ぽんと肩を叩いて言う。
「遠慮は無用ですよ。
だってここは、世の中から隔絶されていますから。
俺達は外に出れないし、外界との通信手段はあっても受けるだけ。
何を話そうが、ここから洩れる事は無いんです。
それが最重要機密でも。」
俺は、彼の言葉にどきっとした。
『最重要機密』。
この施設の存在を隠し、密かに研究を続けている理由が『トマ』なのだ。
彼は未知のウィルスの宿主となってしまった感染者で、唯一の生き残りだった。
最初のコメントを投稿しよう!