2.

3/6

59人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
ある研究所で突然死が起きた。 体中から大量出血し、それが原因で死亡する。 接触した人間にも同様の症状が現れ、同室で働いていた研究者や搬送に当たった救命士が命を落とした。 まるで、海外で猛威を振るったウィルス性の出血熱のようであったが、最初に発症した人間に渡航歴は無く、採取された病原体も今まで検知された事の無いウィルスだった。 すぐに研究所は封鎖され、感染者も隔離された。 原因は実験で使用していた既存のウィルスによる突然変異の可能性が高く、研究所内の人為的ミスである事から、事実は伏せられ、薬品事故として片付けられた。 そして、解明に向けての研究が、この地下施設で引き続き行われている。 最早、生存者はトマだけで、彼は検体として地下深くに設けられた部屋で生き存らえているのだった。 俺はごくりとグラスの水を飲み、加賀に尋ねる。 「トマの家族は?」 「彼は子供の頃に両親を亡くし、成穂(せいほ)教授に引き取られたんだよ。 その教授も例の事故で感染して死亡し、トマは天涯孤独になった。 あの環境じゃ、本当の意味での『孤独』だよな。」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加