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すると北原は前を向き軽く溜め息吐いた。なに、その態度は―― 声を出そうとしたわたしだったけれど、ちょうどオフィスの出入り口についてしまい、前方からやってきた人物と目が合って一瞬息をとめた。 ――早瀬さん。 ただ目が合っただけなのに、鼓動が速くなった。 わたしらしくない。 先にオフィスの中へ入っていった早瀬さんの背中を立ち止まって見つめていた。 「友田さん?」 動かないわたしを北原がどうしたんですか、と振り向く。 はっとしたわたしは「さっ、仕事よ!」と気合いを入れると、北原を追い抜き自分のデスクへ一直線に歩いていった。 座って気持ちを仕事モードへ切り替える。大丈夫。いつもこれで集中しているから―― 「早瀬、友田、ちょっといいか」 仕事にとりかかろうとしたとき、部長に呼ばれた。 しかも早瀬さんと一緒に。どきんと、鼓動が強くなる。何事だろうかと思いながらちらりと早瀬さんを見ると、もう立ち上がって部長のもとへ向かおうとしていた。 だからわたしも立ち上がり、急ぎ足で向かう。 部長のデスクの脇に早瀬さんと立つと、部長はわたしたちを交互に見つめて―― 「早瀬に頼んでる新商品の企画、急だが友田も一緒にやってもらいたい。友田は今回の企画のコンセプトに合っている。ちょうどひとつ仕事終わっただろ? だからお前の力も借りたい。次の会議でプレゼンする予定だから、よろしく頼む」
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