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本棚に追加早瀬さんに本気だって言われて冗談でしょうと思いながらもどきどきしていたこと。
いたずらに微笑まれて、むかつくと思いながらも好きだって思ったこと。
誘うように見つめられて、頬が熱くなったこと。
腹立たしいと思いながらも付き合いたいと伝えたときのこと――
「そうだったの。よかったわね、素敵な人とお付き合いできて」
隣にいる母が優しく微笑んだ。わたしは早瀬さんをちらりと見て、恥ずかしくなりながらも頷いた。
そうやってしばらく色々な話をしていた。早瀬さんの軽妙な話術はさすがだなと思う。
飽きない、疲れない、そんな雰囲気を作ってくれた。
そして、そろそろお店を出るかなというとき、わたしはお手洗いに立った。
お昼時を過ぎているから、お店にはあまりお客さんが残っていないようだ。来たときよりも襖の前に並べてある靴が少ない。
時計を確認すると二時を過ぎたところだったので、ちょっと急いだほうがいいかなと思いながら戻ったときだった。
靴を脱いで襖を開けようとしたら、母の声が聞こえて。
「――いくつになっても心配になるのよねえ。あの子、素直じゃないし強がりだし、不器用で雑だから。たまにね、様子を見に来てしまうの」
わたしはそのまま唐紙の前で動きをとめていた。
「でもよかった。早瀬さんのような人がそばにいて。本当に、安心」
お母さん……。
目元がじんとした。心配してくれているんだろうなって、いつもなんとなく思ってた。
けど、早瀬さんにそんなこと言ったらだめよ。小恥ずかしいじゃない。

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