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憮然とした淡茶色の瞳が疑わしげに注がれていて、下心をダイレクトに射抜かれたユイは慌てて言葉を探す。
「…あ、誰かに聞いちゃったんだ、私の残留の事」
「…」
「なあんだ!週明けびっくりさせようと思ってたのにー」
そんなサプライズいらねぇわ。
─、的な視線をじっとり注ぐ哲太を跳ね返すように、
「そういうわけで。これからもよろしくね?哲くん」
と明るい声で言い、ユイはニコリとした。
「あんま俺ばっかり構うなよ?…他の残留選手だって居るんだし」
「遠慮しなくていいのに。入院中は私が専属スタッフみたいなものだったでしょ?身体の清拭も、食事も…、マッサージだってしてあげた仲じゃない?…哲くんの彼女も同然だったでしょ?」
「ジョーダンやめて、マジで。…もう部屋行くわ」
疲れを滲ませる物言いの後、哲太はバッグを肩に担いで歩き出した。
「ゆっくり休んでね?明日は早朝からベンチトレーニングだから!」
「…」
……ふふ。随分ね。
私はね。
満更、ジョーダンだなんて思ってないのよ?哲くん。
ついさっきまではみはねさんの事、あんなにも優しく抱き寄せて、包み込むように甘く、口付けていたくせに。
昨夜だって、…
寝不足になる位にまで、夜を徹して情熱的に愛を注いであげていたくせに。
──、でも、きっとそこから目を背けさせてみせる。
まだ、間に合う。
手段はいくらだってある。
心の中でそう決意を置くユイの眼差しは、スタジアムの外、哲太の解け消えた夜景に向け注がれていた。
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