#12. envy

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憮然とした淡茶色の瞳が疑わしげに注がれていて、下心をダイレクトに射抜かれたユイは慌てて言葉を探す。 「…あ、誰かに聞いちゃったんだ、私の残留の事」 「…」 「なあんだ!週明けびっくりさせようと思ってたのにー」 そんなサプライズいらねぇわ。 ─、的な視線をじっとり注ぐ哲太を跳ね返すように、 「そういうわけで。これからもよろしくね?哲くん」 と明るい声で言い、ユイはニコリとした。 「あんま俺ばっかり構うなよ?…他の残留選手だって居るんだし」 「遠慮しなくていいのに。入院中は私が専属スタッフみたいなものだったでしょ?身体の清拭も、食事も…、マッサージだってしてあげた仲じゃない?…哲くんの彼女も同然だったでしょ?」 「ジョーダンやめて、マジで。…もう部屋行くわ」 疲れを滲ませる物言いの後、哲太はバッグを肩に担いで歩き出した。 「ゆっくり休んでね?明日は早朝からベンチトレーニングだから!」 「…」 ……ふふ。随分ね。 私はね。 満更、ジョーダンだなんて思ってないのよ?哲くん。 ついさっきまではみはねさんの事、あんなにも優しく抱き寄せて、包み込むように甘く、口付けていたくせに。 昨夜だって、… 寝不足になる位にまで、夜を徹して情熱的に愛を注いであげていたくせに。 ──、でも、きっとそこから目を背けさせてみせる。 まだ、間に合う。 手段はいくらだってある。 心の中でそう決意を置くユイの眼差しは、スタジアムの外、哲太の解け消えた夜景に向け注がれていた。
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