母の場合

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母は私が大人になって就職してからも、毎年誕生日には何かしらのプレゼントを贈ってくれていた。 それは花束だったり、本好きな私のために図書カードだったり、私の喜ぶものを一生懸命考えてプレゼントしてくれた。 もちろん、写真に向かって言ったのは本気だったわけではない。 ただ、今年の誕生日には母からの『誕生日おめでとう』がもう聞けないんだなと思うと寂しくて切なくて、つい冗談交じりに口をついて出たセリフだった。 だからそれきり、そのことは忘れてしまった。 そして2週間ほどがたったある土曜のこと。 飼っているインコの調子がちょっと悪いように思えて、小鳥専門の動物病院で診てもらった帰りのことだった。 私はブリーダー兼ペットショップを営んでいる知り合いの店に立ち寄った。 特に何の用があるわけではなかった。 近くまで来たから、ちょっと顔を出していこうかな、くらいの軽い気持ちだった。 彼は私がインコを大切にかわいがっていることをよく知っているので、小鳥用のオーガニックフードやサプリメントなどを、いつもいろいろ薦めてくれたりするのだった。 ところがその日は違っていた。 私の顔を見るなり、 「ミニチュア・シュナウザーの仔犬が生まれてるけど、どう?」 と言ったのだ。 ミニチュア・シュナウザー!
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