4人が本棚に入れています
本棚に追加
それから10年後、かわいがっていた犬が死んでしまった。
近所で生まれたのをもらってきた柴犬系のミックスで、ビリーという名前だった。
父がいなくなって寂しくなった私達家族を、どれだけ慰め癒してくれたことか。
私にとっては弟のような存在で、家族の一員として大切に大切にかわいがっていたのに、てんかんの発作であっという間のことだった。
ペットロスに陥った私は、一週間で体重が10kgも減ってしまった。
ビリーに会いたい、もう一度ビリーを抱きしめたいと、子供のように泣いて私は母を困らせた。
そしてその翌年の夏。
久しぶりに私はビリーの夢を見た。
それまでは、元気だった頃の、生きているのが当たり前のビリーの夢しか見たことがなかった。
なのにこの日は、死んだビリーが私に会いに来てくれたのだと、夢の中の私にもわかった。
やっと会えた。
ずっと会いたかったビリーに、とうとう会えた。
「ビリー!」
私は大きな声で名を呼んだ。
ビリーは昔みたいに尻尾をピンと立て、一目散に私の元に走ってきた。
そしていつものように腕と脇の間に鼻先をぐいぐい突っ込み、しゃがんでいた私は後ろに尻もちをついてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!