ビリーの場合

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それから10年後、かわいがっていた犬が死んでしまった。 近所で生まれたのをもらってきた柴犬系のミックスで、ビリーという名前だった。 父がいなくなって寂しくなった私達家族を、どれだけ慰め癒してくれたことか。 私にとっては弟のような存在で、家族の一員として大切に大切にかわいがっていたのに、てんかんの発作であっという間のことだった。 ペットロスに陥った私は、一週間で体重が10kgも減ってしまった。 ビリーに会いたい、もう一度ビリーを抱きしめたいと、子供のように泣いて私は母を困らせた。 そしてその翌年の夏。 久しぶりに私はビリーの夢を見た。 それまでは、元気だった頃の、生きているのが当たり前のビリーの夢しか見たことがなかった。 なのにこの日は、死んだビリーが私に会いに来てくれたのだと、夢の中の私にもわかった。 やっと会えた。 ずっと会いたかったビリーに、とうとう会えた。 「ビリー!」 私は大きな声で名を呼んだ。 ビリーは昔みたいに尻尾をピンと立て、一目散に私の元に走ってきた。 そしていつものように腕と脇の間に鼻先をぐいぐい突っ込み、しゃがんでいた私は後ろに尻もちをついてしまった。
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