ビリーの場合

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でも、そう、今日は8月14日。 昨日、母と一緒に父の為に迎え火を焚いたのだった。 その時、ビリーの魂も一緒に帰ってきてくれたのだろうか。 母は大急ぎで、ビリーが好きだったおにぎりを作った。 本当は人間のご飯なんて犬にあげちゃいけないんだけど、いくら言っても母はビリーが欲しがるからと言い訳をして、中に何も入れないおにぎりを作ってあげていた。 ビリーはそれが大好きで、母が準備を始めると鼻をひくひくさせながらオスワリをして、いい子で待っていたものだった。 出来上がったおにぎりは、棚に飾ってあるビリーの写真の前にお供えをしてあげた。 ところがしばらくすると、パタン、と何かの音がした。 見ると、地震もないのにビリーの写真を飾った写真立てが倒れていた。 おかしいなと思って起こしてみると、ちょうどおにぎりの上に倒れたせいで、ビリーの口元にご飯粒がついていた。 「お母さん、見て! ビリーがおにぎり食べた! やっぱりビリーは帰ってきてる!!!」 ビリーは今、この家の中にいる。 私はそう確信した。 そして夢の中でもいいからもう一度ビリーに会いたい、ビリーの足音を聞きたいと願ったが、お盆が終わるまでにとうとうどちらも叶わなかった。
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