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「力尽きて浜辺で寝てたからこのままだったらきっと波にさらわれていただろう」
淡々と青年はいきさつを話す。
今のご時世、行き倒れ?
やっぱりこの人は侍なのかもしれない。
「は、はぁ……」
思わず生返事。
どう答えてよいかわからなかった。
「旅人か?」
青年は真っ直ぐにあたしを見る。
いや、穴が開きそうなくらい見ている。
そんなに旅人が珍しいのかしら?
「え、えぇ。
まぁ、そうですが……」
青年の視線がチクチクと刺さる。
でも、嫌な感じはしない。
どうしてだろう……。
「長い黒髪、大きな瞳に長い睫。
小柄で華奢……。
しかも人見知りしない」
何故かあたしをチェックしている。
不覚にも少しドキドキしてしまった。
この人、黙っていれば結構なイケメンなのに勿体ない。
「えっと……」
思わず困惑。
こういう場合、どうしたらいいの?
走って逃げても失礼だよね?
「時間あるようだったらお付き合い願おう」
真面目な顔してあたしを誘う青年。
しかも言い回しが何だか古い……。
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