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「藤原さん、ちょっといいかしら?」
あたしはデスクに書類を広げ頭を抱える。
「はい」
藤原と呼ばれた男性社員があたしの元へトコトコとやってくる。
彼の名前は藤原 泰斗(ふじわら たいと)。
他部署から異動してきた社員。
「ここ、直してほしかったんだけど……。
気づいてなかったみたいだから修正しておいたわ」
あたしはデスクに広げた書類を指でトントンとする。
「すみません」
素直に藤原さんは謝る。
「会議で使う資料だから見落とさないでね」
素直な藤原さんに免じてあたしは優しく書類を返した。
「はい」
あたしから書類を受け取ると藤原さんはさっさと自分のデスクへ戻っていった。
そして颯爽とPCに向かい書類を確認し始めた。
「また藤原さん注意されてるわ」
社員達がボソボソと何かを言っている。
あたしは静かに聞き耳を立てる。
「あの人他部署ではトップだったのに今じゃあのザマ」
誰かの囁きが聞こえた。
確かに藤原さんはこの部署に来るまではバリバリの営業マンだった。
最高のルックスと巧みな言い回しはうちの部署でも評判だった。
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