働き蟻の格率

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 二つ、有名な話をしよう。  有名な話の中に「働き蟻の法則」と童話「アリとキリギリス」というものがある。    今となってはどちらも知らない者のほうが少ない有名な話だろう。    働き蟻の法則。  これは働き蟻を百匹集めた場合、その中の二割はよく働き、六割はそこそこ働き、残り二割は全く働かない蟻になるという集団における行動法則だ。  この法則においてもっとも注目しなければならない点は、いくら怠ける蟻を排除してもこの割合が不動だという点――では決してない。  「働き蟻の法則」で着眼しなければならないのは、この法則の立証のため排除された怠ける蟻はほかの働き蟻たちから決して迫害されることがなかったと言う点なのだ。  八割という働く蟻たちに囲まれた中でさえ彼らは我を貫き己の道を突き進み、誰にも文句を言わせていない。  彼らは、集団という中において「働く」という彼らの名前にもなっている義務を免除されるだけの権利を有しているということがわかる。  逆に言えば彼ら怠け組は、他の八割にも達する働き蟻とは一線を画す勝ち組なのだ。  このことから、怠けものと揶揄されてきた彼らは堅実的に見れば勝ち組、もとい社会の勝者だという仮説がここで出来上がる。  そう、まだここでは仮説。  
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