第2章 運命

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 谷口信(たにぐちまこと)、十六歳は坂を歩きながら家路を急いでいた。  身が凍るような木枯らしが緩むと、空の色さえ違う季節になってくる。  (でも、たいして風景なんか変わらない)  と、彼は思っていた。  大通りの中間にある高速道路のガード下にある公園は一人も子供はおらず、閑散としているし、お化けが出るなどと噂がある信号などは古ぼけて、ランプが青になれば電子音の《通りゃんせ》を鳴らし始める。  この区域はガードレールのあちこちに菊が供えてあるなど、なんとも陰気な雰囲気が漂う場所だ。  無理もない。  十年前に、このガードの上で玉突き事故が発生して十八人の人々が亡くなっている。  磨耗したタイヤが破裂して、トラックが横転したのが原因だった。  運悪く後続車両だったタンクローリーが衝突、次々と車間距離をあけてなかった乗用車、軽自動車が九台も玉突き事故を起こす大惨事に起きたのだ。
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