第2章 運命

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 以前から、『此処の高速道路はカーブが急で危険だぞ、いつか大きな事故が起きるんじゃないか』と、ドライバーの中では噂されていたが、それが現実になったことになる。  だから未だに、この付近では花を供える人が少なくない。  それが今では都市伝説や怪談のネタになり、物好きな連中の溜まり場になっている。たとえばあの事故で死んだ人がガード下の交差点で、ドライバーに手招きするとか、真夜中にヘッドライトに焼けた人が照らされたとか……。  こんな都市伝説もある。  《この先にあった酒工場のタンクの中で、悪霊に惨殺された二人の子供の死体が浮いていたらしい。中の白い濁り酒は真っ赤に染まっていたという》  そんな奇怪な噂がある場所で、ウキウキした気分になれるはずがない。  (だけど、いつかみんな忘れちゃうよ)  と、信は思う。  いずれ四季が巡り、年月は積み重なる。
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