第1章 少年

2/9
前へ
/306ページ
次へ
 想像してみて欲しい、ある日、担当医から藪(やぶ)から棒に『大丈夫、頭痛も腰の腫瘍が神経を刺激するからですよ、切除すれば治まるはずです。なあに、簡単な手術ですよ、入院の手続きをしますから、早いうちに手術を行います』と、言われたとする。  担当医師は簡単な説明はおろか、肝心な病名さえ告げようとしない。『手術するから』とだけ告げられて、あなたは遠慮がちに、  「あのう、レントゲン写真は?」  と、訊いてみる。  すると医師は「子供が見てもわからないよ、お父さんに詳しい説明をしておきますから」と、取り付くしまもない。    まさに浦見桂男(うらみかつお)はそんな不安な状況にいた。  桂男は十歳の小学五年生だ。  担当医師の話を聞いて、彼は溜息をついた。
/306ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加