74人が本棚に入れています
本棚に追加
父親である院長に何を言っても暖簾(のれん)に腕押しで、具体的な情報を得られないままだ。
(父さんに口止めされているんだ)
そう思っていたら、看護師から『大丈夫ですよ』と、愛想笑いをされて、
(ああ、いつもこれだ。誰も病気のことを教えてくれない)
と、釈然としないまま、帰宅するのが日課になりつつある。
原因なら当人にも見当がついている。
腰にある瘤(こぶ)だ。
松葉杖を突きながら、桂男は瘤を恨めしく思った。
生まれた時からあり、ドッジボールほどの大きさがある。
このままでは車椅子、いや、もっとひどい症状になるかもしれない。近頃では椅子に座るのさえ苦痛で、寝るときだってうつ伏せの姿勢で睡眠をとっているような按配だ。
最初のコメントを投稿しよう!