第1章 少年

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 (こんなの、とっとと切ればいいんだよ!)  だが、なぜか放置されて、近頃では松葉杖を突いて歩くのも辛い。素人の感覚でも悪化しているのが感じられるが、自分ではどうにもならず、なにか得体の知れない雰囲気を感じながら木偶(でく)の坊のように医師の指示に従うしかないのだ。  彼は思う。  (この腰の瘤さえなければ、元気に走り回れたのに)  このままでは楽しみにしている修学旅行もあきらめないといけない。  体育もできず、この体のせいでクラスメートから疎(うと)んじられて、友達も数人しかいない。  来年は小学六年生、そして卒業すれば中学生になるのに、今度は原因不明の偏頭痛で苦しむ日々だ。  (手術すればサッカーだってできるのに!)  そんな時、ふと気付く。
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