初登校

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 朝起きて着替える。身支度を終えてダイニングへ行くと すでにターニャが朝食を準備してくれていた。  シリアルが数種類、パンとジャム、チョコレートペースト「ヌテラ」、そして飲み物はジュースと牛乳。  「おはよう、ハナ。早起きね。すぐにアダムも来るから、先に食べましょう?」  ターニャは私のためにわざわざ鍋でご飯を炊いてくれていた。アダムは3階の寝室からタタタと階段を駆け下りてきた。 「おはようございます。Good Morning」 とアダムは日本語と英語で挨拶した。 「さあ、食べましょう」  とターニャ。アダムと私はまずシリアルを食べた。ターニャとアダムは上手くコミュニケーションをとっていた。ターニャがいくらゆっくり話してくれても頭に入らない。  食べ終えるとすぐに学校に行く準備。この学校は初日、学校までホストマザーが送るという決まりがあった。  私達は一緒に家の前のバス停に行った。初めて乗るイギリスの路線バス。日本のようにバス停に人がいれば止まってくれるわけではない。自分が乗る番号のバスをよく見て、手で合図してバスを止めなければならない。  合図しなければバスはいくらバス停にいても素通り。  バスに乗ったら行き先をバスの運転手さんに言い、料金を払う。この日だけはターニャがお手本を見せてくれた。  バスから見えるイギリスの小さな田舎町。すべてが物珍しかった。バスの中には日本のように運賃表はない。アナウンスもない。自分が降りるバス停の近くになったら自分でベルを押さなければならない。ターニャは 「あの川が見えたらベルを押すのよ」  と教えてくれた。そしてバスを降り 「ここから真っ直ぐ行けば学校に着くわ。私は帰るから。じゃあね」  と言って手を振った。朝から元気のいい人だ。眠い目をこすりながら、私はアダムについて行った。
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