いざ イギリスへ

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 世間がミレニアムで湧いた年、私はイギリスに向かう飛行機の中で 「これから1年間はどんなことがあっても日本に帰らない!」  と1人決意した。自慢じゃないが、英語は全くと言っていいほど話せなかった。    気休め程度に、とっさに使える英語のフレーズをノートに書いて暗記した。もっと前から準備しておくべきだった。行けば話せるようになるだろうと軽く考えていた。    飛行機の中を歩いていると、年輩の女性が私に話しかけた。 「どこに行くの?」 「バースです」  彼女は目を丸くして両手を広げてオーバーに驚いて見せた。 「バース。素敵な所よ。観光?」 「いいえ、英語を勉強しに行きます」 「え? あなたの英語は上手なのに!」  お世辞を使うのは万国共通らしい。私はノー、ノー、とんでもないですと手をバタバタさせ、全力で否定した。 「楽しんでね。グッド・ラック」  彼女は私の肩に手を置くと、座席に着いた。私がこれから行くバースという街は素敵な所。そう聞いて期待で胸が膨らんだ。
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