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私達はタクシーに乗りシートベルトを締めた。夜8時ごろだっただろうか。辺りはすっかり暗くなっていた。
田舎町とは聞いていたが、夕方ロンドンを出発し、これから見ず知らずのオッサンと密室のタクシーで2人きり。悪い人だったらどうしよう?
異国の地できちんと確認せず、簡単に車に乗った私もバカだ。私の被害妄想は膨らんだ。
運転手さんは私に「このオッサン大丈夫だろうか?」と怪しまれたくないのか、色々話しかけてきた。
「どこから来たの? イギリスは初めて?」
「日本から。いいえ、2回目です」
問題は英語力じゃない。私が話を膨らませなかったことにある。運転手さんからの質問攻めが続いた。
「ソーリー、ワカリマセン」
私が"I don't know"をあまりにも続けて言うものだから、
運転手さんも黙り込んでしまった。
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