ミセス・ターニャ

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「さあ、夕食にしましょう」  ターニャが歌いながら夕食の準備をする。 「どうして日本語がそんなに上手なんですか?」    イギリスに語学留学するぞと意気込んだくせに早速日本語でアダムに話しかける私。 「大学でちょっと勉強しました。でもまだ下手です。もっと上手になりたいです」  彼の日本語は私の英語より上手だった。発音も訛りがほとんどなかった。  アダムと会話をしていてふと思った。彼はいつ家に帰るのだろうと。だいたい彼はなぜここにいるのだろう。 「あの…ホームステイですか? まだ帰らなくていいんですか?」  私の質問に何をとんちんかんなこと言ってるんだと言わんばかりの表情でアダムは 「僕のホームステイ先もここです」  と日本語で私に説明した後、1人で大笑いして英語でターニャに説明していた。ホームステイ先に他の生徒がいるなんて知らなかった。  アダムは自ら積極的に「ミセス・スミス、お願いがあるのですが」とか「ミセス・スミス、質問があるのですが」と尋ねていた。2人はすぐに意気投合したようだ。  スパゲティを食べ始めると、自宅の電話が鳴った。ターニャが出た。お喋りな彼女の英語が止まった。私はすぐに「父だな」と感づいた。
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