4313人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだな、それでいい」
すぐに表情を戻した立花さんは、胸元の内ポケットから何か取り出そうと手を入れた。
ただの、今まで通りの日常の一コマだ。
あんな場所から拳銃を取り出す事なんてきっとこの先、二度とない。
「榛葉?」
「――っ」
二度と、ない。
二度となんて、ない。
そう思っていたのに、俺は頭を両手で押さえて蹲ってしまっていた。
無意識で、無自覚で、反射的に。
「怖かったのか?」
「た、立ち眩みです」
「――榛葉」
低い声で、嗜めるように言われると、俺は何も上手く誤魔化せる言葉が出ない。
「立ち眩みですって。あはは。菊池さん菊池さん」
立ち上がって踵を返し、菊池さんのいるフロアへ移動しようとしたら、そのまま立花さんに手を掴まれてソファへ突き飛ばされた。
「俺に嘘をつくのか?」
「た、ちばなさん」
「――嘘をつくのか」
「嘘、じゃっ―――んんっ」
強情だと言わんばかりに無理矢理唇を奪われる。
最初のコメントを投稿しよう!