十一、蜜月と嘘月

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佐之助さんの時は、閉じ込めて自由を奪う事で守られていたけれど、俺は今はそれがきっと駄目なんだろうなって自覚している。 守られて外の情報が入って来ないようにしている今は、閉じ込められているのとなんら変わりはない。 未だに藤宮さんの死が、俺には現実の様に感じられなくて夢物語のようだった。 「目隠しされて閉じ込めるのは、守るってことじゃないです。俺が――俺が知らなければ大丈夫だと思ってますか?」 「榛葉、お前」 「俺に関わったせいで藤宮さんは亡くなりました。俺が人を不幸にしてるんですよね。俺が……。貴方はその現実を俺に隠そうとしている」 きっとそうだ。 家でもテレビを着けなくなったのは、俺があの日、藤宮さんの死をテレビで見てしまった時だ。 あれからずっと、立花さんは俺に目隠しをしようと、優しいんだ。 「――俺はまだお前を縛りつけていると、言いたいのか」 低い声で言われると、身体が強張った。 「だったら、何故俺に抱かれようと強請るんだ。お前だって」 立花さんの顔が、自虐的な笑みで染まっていく。 くしゃくしゃの、泣きだしそうな顔にも見える。 「俺を利用しているのに、な」
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