十一、蜜月と嘘月

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「……そうかもしれませんが、でも、最近は優しかったし、俺の言葉を聞いてくれてました」 「そう? 今のうちにとっとと榛葉くんは社長のマンションから出て、美容師に戻って、離れちゃった方がよくない? 君には社長は重たくて害でしかないでしょ」 軽い口調で菊池さんはとんでもないことを言う。 そんなに俺達が簡単に離れられるわけはないって知らないわけじゃないのに。 「……やはり、立花さんともう少し話し合ってみます」 「ああ、そうそう、どうせ、君、知らないだろうから言っておくけど」 「はい?」 「毎晩、君が事件のフラッシュバックで泣いて起きる度にあの冷徹な立花社長は君をあやして抱き締めてくれてるらしいよ」 「えっ」 その言葉は、更に後悔させた。 眠れないからと仕事で疲れている立花さんに毎日強請った挙句、疲れてぐっすり眠れてると思っていたのに俺は泣いて起きていた。 これが本当だったのならば、さきほどの立花さんの言葉は、――真実で。 俺は彼を傷付け続けていたんだ。
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