十一、蜜月と嘘月

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(ひっ) 思わず後ろへ仰け反る。テレビには、俺があの日、佐之助さんに撮られたビデオが映っていたから。 『まあ、アイツが来るまで、君の具合でも見てみようかな』 「――!?」 『具合?』 『ここの具合ですよ』 『あああっ』 あの時の映像だ。なんで?なんでなんでなんでなんで。 ソファに座って、立花さんが険しい顔をしながらテレビを睨んでいる。 「見ないでください!」 「佐之助から送られてきた。俺宛の物をどうしようと勝手だろ」 『流石にこれは痛いですよね。可哀想に』 「ひ、い、いやだっ」 テレビの電源を落とそうとリモコンを手に取ると、立花さんが俺の腕を取る。 「離してっ」 『自分で、抜きなさい。力を抜いて、押し出すように。出来ますよね?』 「見ないで見ないで!止めて止めて下さい」 思い出したくもない恐怖が、――体中から溢れてくる。 見たくない、立花さんに見られたくないっ
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