十一、蜜月と嘘月

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Side立花優征。 榛葉の呆然とした顔を見て、そのまま仕事も何も投げ出して家へ帰った。こんな馬鹿みたいなことをするのは、初めてだった。自分でもガキ臭くて吐き気がする。だが、あの場に居ても、俺は榛葉を無理矢理自分に屈服させようと、同じことの繰り返しで傷つけたに違いない。 すると、管理人が佐之助からの荷物を預かっていた。 マンションへ帰って、仕事の指示と、榛葉の監視を菊池に命令してからそのDVDを再生して、固まった。 最初の一枚だけではなく、二枚目の拳銃を押し込められて、目を見開いている榛葉の映像は知らなかった。 これをあの時知っていたら、――俺は間違いなく佐之助の頭を撃ち抜いていた。 いや、生きたまま内臓を引き裂いても生ぬるい。 怒りが込み上げて、どう佐之助を地獄へ突き落としてやろうか腹の中は煮えくりかえっていた。 榛葉が飛び出して、俺に映像を見るなと叫んでいた時には、既にもう見終わった後で、映像がリピートされているのにも気づかなかった。 「うっううっ」 必死で俺の目を押さえて、榛葉が泣いている。
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