十一、蜜月と嘘月

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『で、できなっ』 『――出来ないなら、引き金部分まで押し込んであげます。締めつけた瞬間、引き金も引いてしまっ たりしてね』 「榛葉、手をどけろ」 「いやっい、やっ」 「――もう、さっき全部見ている」 「――っ」 どれだけ隠したいと思っていても、俺は、俺が知らない榛葉の姿がある方が許せない。 榛葉は、震える手を俺の目から離すと、そのまま自室へ走って逃げていく。 ――逃がすものか。 何度も何度も、逃げられるのは我慢ならない。 ドアを閉めようとした榛葉の腕ごと浚い、胸の中へ閉じ込める。 「離してっ」 「抜糸もまだだから、暴れられたら――傷が開くぞ」 つまらない嘘だ。 だが、馬鹿な榛葉には十分すぎる呪文なのは、分かっていた。 もがくが、暴れる力が弱くなった榛葉を、俺の寝室へ連れ去り、ベットサイドへ座らせた。 真っ赤な目で泣いていたが、ぱっと両手で顔を隠してしまった。 「恥ずかしいのか?」
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