十一、蜜月と嘘月

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勿論、本気で、あいつらを佐之助と纏めて消してやろうと思った。 そうすれば、少なくても味方は増えないが敵になるかもしれない奴が一人、消えてくれる。 恐怖――。 そんなものを、感じたことなどないが、榛葉の不安を打ち消すにはどうしたらいいか――。 抱き締めて、甘い言葉を囁けば、榛葉は俺だけを信じて誰も信じなくなり、結果的には不安がなくなるかもしれない。 「ちょっと待っていろ」 でも、それが榛葉の恐怖心に打ち勝つ最善なことだろうか。 多分あったはずのモノと、いつも使っているはずのモノ、二つを持って寝室へ戻ると、泣いていた榛葉の顔色が変わった。 俺が用意したのは、ビデオカメラと剃刀だったから。 剃刀の先端のキャップを外すと、榛葉が大きな声を上げて布団の中へ逃げ込んだ。
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