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サイレンは聞こえるけれど、まだ消防車は到着していなかった。
代わりに、近くの交番の警察官が避難を誘導していた。
その警察官二人は、顔見知り――というかストーカー事件で何度か御世話になっていたし、家を荒らされた時に現場を見てもらっていた。
燃えているのは、俺が働いているヘアサロン『RIG』がテナントで入っているビルだ。
丁度燃えているのは、『RIG』。
思わずコンビニの袋を地面に落とすと自分も膝から崩れた。
一瞬で人は地獄へ落とされる。
でも、それは――俺の場合、自分が悪かったことは一回もない。
いつも巻きこまれるんだ。少なくてもそう思っているのに。
「愛沢!!」
座りこんでいた俺の胸ぐらを掴んだのは、目が血走ったヘアサロンの店長、葉山さんだった。
「通報があったんだよ! お前がコンビニへ行ってすぐにお前のストーカーが火を放ったってな! お前が!お前が俺の店を」
ストーカー。
その言葉に鼓動が速くなる。
俺が店に居ると思って火を放ったのだろうか――。
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