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あれは、
パーティーに顔を出して帰ろうと店を出て直ぐのことだった。
賑やかだった店内から一歩外へ出ると、
日が沈んで辺りはもうすっかり薄暗くなっていた。
駐車場で待たせているマネージャーの車へと歩いているうち、
一人でいるのが心細くなってきた私が、
脚を進める速度を速めたちょうどその時、
「…彩乃」
背後から躊躇いがちに名前を呼ばれて、
その場にまるで縫い止められたように、
脚が動かなくなってしまった。
もう、
自分の記憶から消し去ってしまった筈なのに……。
もし、
逢ってしまっても揺らいだりしないって思っていたのに……。
その懐かしい優しい声を聞いただけで、
手の届かない、
胸の奥のずっとずっと深い所に封印してた筈の想いが、
あの頃の幸せだった記憶が……
熱い涙と一緒に溢れてしまって、
自分ではどうすることもできなくなってしまった。
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